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介護現場におけるハラスメント防止勉強会レポート|職員全員で安全な職場をつくる取り組み

介護現場におけるハラスメント防止勉強会レポート|職員全員で安全な職場をつくる取り組み

2024年8月25日、指定居宅介護支援事業所イデアにて「ハラスメント防止勉強会」が開催されました。
この勉強会は、全職員が安心して働ける職場づくりを目指し、ハラスメントの正しい理解と防止策を学ぶことを目的としたものです。

今回はその内容を整理し、介護業界で働く方々に役立つ視点をレポートします。


ハラスメント防止の基本方針

勉強会の中心となったのは「ハラスメント指針・マニュアル」の読み合わせでした。
指針には以下の内容が明記されています。

  • 目的:安心して働ける環境を整備し、質の高い介護サービスにつなげる

  • 対象となるハラスメント

    • 職場におけるパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント

    • 介護現場での身体的暴力、精神的暴力、カスタマーハラスメント

  • 防止策:年1回の研修、新規採用者への入職時研修を必須化

  • 相談体制:管理者を窓口とし、電話・メール・LINEなど複数の相談手段を整備

  • 対応手順:相談→事実確認→判断→対応→再発防止までの明確な流れ

特に「相談者が感じた不快感を重視する」という点が大切にされていました。


職員の気づきと意見交換

勉強会では職員それぞれが意見や経験を共有しました。

  • 平良主任:無意識の言動がハラスメントとなる可能性を意識し、相談しやすい環境づくりの必要性を指摘

  • 宮城さん:利用者からの理不尽な要求を一人で抱え込まず、チームで対応する大切さを強調

  • 潮平さん:普段の言葉遣いが相手に与える影響について改めて意識したいと発言

  • 眞榮田さん:制度外の過剰な要求や外見に関する不適切な発言への対応経験を共有し、行政や専門職との連携の重要性を紹介

それぞれの発言から、日常業務の中に潜むハラスメントのリスクが浮き彫りになりました。


管理者からのまとめと指針

最後に、屋比久管理者より以下の点がまとめとして示されました。

  • 相談窓口としての役割を担い、まずは遠慮なく相談してほしい

  • 人格否定や外見への言及などは明確にハラスメントに当たる

  • 業務命令と「相談」の違いを理解し、誤解を避ける

  • カスタマーハラスメントは「業務範囲内か否か」で線引きする必要がある

  • 虐待事案は地域包括支援センターや行政に報告する体制がある

  • ハラスメントは主観性が大きく関わるため、共通認識を持つことが重要

  • 年1回以上の研修を必ず行い、継続的に学びを深める

このように、具体的な線引きと対応の指針が明示されたことで、職員の安心感が高まりました。


まとめ|学びを継続することが最大の防止策

今回の勉強会を通じて、職員はハラスメントの定義や種類を理解し、「自分ごと」として意識を高める機会となりました。

介護現場では利用者や家族との距離が近いからこそ、思わぬ言動がハラスメントにつながる可能性があります。
そのためには、

  • 定期的な研修で知識を更新する

  • 職員同士で相談し合える風土をつくる

  • 管理者を中心に明確な対応方針を示す

といった取り組みを継続することが不可欠です。


👉 ハラスメント防止は「一度学んで終わり」ではなく、職場全員で意識を共有し続けることが大切です。

認知症ケア勉強会レポート|基礎から実践へ学びを深める一日

認知症ケア勉強会レポート|基礎から実践へ学びを深める一日

2024年7月28日、イデア内で開催された認知症ケア勉強会に、スタッフ5名が参加しました。本勉強会は、認知症に関する正しい知識を共有し、現場でのケアに生かすことを目的とした学習の場です。参加者全員が熱心に学び合い、日々の支援へとつなげるための実践的な理解を深めました。


勉強会の目的と概要

今回の勉強会の大きなテーマは、**「認知症を正しく理解し、適切な対応を考える」**ことです。
認知症は単なる物忘れとは異なり、医学的には「認知機能の低下が6ヶ月以上継続する状態」を指します。病名そのものではなく、あくまで「状態」を示す言葉であることが強調されました。


学びのポイント

1. 認知症の定義と症状

  • 認知症は「症状の総称」であり、診断には医師の判断と経過観察が必要。

  • 症状には大きく2種類がある。

    • 中核症状:記憶障害や見当識障害など、脳の変化によって直接引き起こされる症状。

    • 周辺症状(BPSD):不安、幻覚、徘徊など、環境や対応によって変化し得る症状。

特にBPSDは、ケアの工夫次第で改善が期待できる点が印象的でした。


2. 主な認知症の種類と特徴

学習会では、代表的な認知症の種類についても整理されました。

  • アルツハイマー型認知症
    最も多いタイプで、体験そのものを忘れてしまう「記憶障害」が中心。進行に伴い、妄想や見当識障害も出現します。

  • 脳血管性認知症
    脳梗塞などが原因となり、「まだら認知症」や感情のコントロールが難しくなる「感情失禁」が特徴。生活習慣病予防の重要性も再確認されました。

  • レビー小体型認知症
    幻視、パーキンソン症状、症状の日内変動が見られる。幻視対応は「否定せずに共感」が基本姿勢です。

  • 前頭側頭型認知症(FTD)
    物忘れよりも行動変化や人格変化が前面に出やすく、介護負担が大きくなる傾向があります。

  • その他の種類
    若年性認知症、アルコール性認知症、外傷後認知症、手術で改善が可能な「正常圧水頭症」など、多様なタイプが存在します。


3. 認知症クイズで理解を深める

学習後には10問の「認知症クイズ」が実施されました。

  • 認知症では「体験そのものを忘れる」ことが特徴

  • 中核症状と周辺症状の違い

  • 正常圧水頭症のように改善可能な認知症があること

といった重要なポイントが復習され、参加者の理解度が確認されました。


勉強会の総括

最後にまとめられたポイントは以下の通りです。

  • 認知症は「病名」ではなく「状態」であり、6ヶ月以上の経過観察が必要。

  • 周辺症状は環境や対応で改善できる可能性があるため、柔軟なケアが求められる。

  • 偏見や固定観念に縛られず、その人らしさを尊重した個別対応を重視する姿勢が不可欠。

この学びを通して、参加者全員が「認知症ケアは単なる知識ではなく、日々の実践の中で工夫し続けることが大切だ」と再確認しました。


まとめ

認知症ケア勉強会は、基礎知識の整理とともに、現場での対応力を高める貴重な時間となりました。参加したスタッフは、今回得た学びを日常のケアへと還元し、利用者一人ひとりに寄り添った支援を実践していくことを誓いました。

今後も定期的に勉強会を重ね、より良い支援につなげていく予定です。

適切なケアマネジメント手法について(主任介護支援専門員更新研修に参加して)

 今回、主任介護支援専門員更新研修へのカリキュラムで採用されているトピックが『適切なケアマネジメント手法について』となっています。

研修に参加する中で、学びとなった部分をブログ記事として紹介します。初めに、「適切なケアマネジメント手法」とは?その概要を説明します。

「適切なケアマネジメント手法」とは

 「適切なケアマネジメント手法」とは、要介護高齢者本人とその家族の生活の継続を支えるために必要な支援内容を体系化したものです。

 これは、先人たちの知識と実際の状況から得られた知見を体系化し、ケアマネジメントや多職種が効果的な支援を行う上で必要な視点を取り入れた、**科学的な根拠に基づく「仮説」**とされています。

目的と基本的な考え方

 この手法は、ケアプランにそのまま位置づけることを想定しているのではなく、インテークやアセスメントの際に「あたり」(初期の仮説)の精度を高め、多職種連携時における情報共有のツールとして活用することを目指しています。これにより、重要な視点や情報の抜け漏れを防ぎ、ケアマネジメントの水準を一定以上に保つことが期待されます

 主な構成と支援の視点

 「適切なケアマネジメント手法」は、主に以下の3つの基本方針と、それぞれに紐づく中項目、そして具体的な「想定される支援内容」で構成されています。

Ⅰ 尊厳を重視した意思決定の支援

現在の全体像の把握と生活上の将来予測、備え:疾病や心身状態の理解、併存疾患の把握、口腔内の異常の早期発見と歯科受診機会の確保、転倒
・骨折リスクの確認、望む生活・暮らしの意向の把握、一週間の生活リズムの把握、食事・栄養状態の確認、水分摂取状況の把握、コミュニケーション状況の把握、家庭や地域での活動と参加状況の把握、口腔内及び摂食嚥下機能のリスク予測、転倒などの身体負荷リスク予測、感染症の早期発見と治療、緊急時の対応などを含みます。
 
 ・意思決定過程の支援:本人の意思を捉えるためのエピソード等の把握、日常生活における意向の尊重、意思決定支援の必要性の理解、意思決定支援体制の整備、将来の生活の見通しを立てることなどを支援します。
Ⅱ これまでの生活の尊重と継続の支援
予測に基づく心身機能の維持
・向上、フレイルや重度化の予防の支援:水分と栄養を摂ること、口腔ケア及び摂食嚥下機能の支援、継続的な受診
・療養の支援、継続的な服薬管理の支援、体調把握と変化を伝えること、フレイル予防のための活動機会の維持、継続的なリハビリテーションや機能訓練の実施などを支援します
日常的な生活の継続の支援:一週間の生活リズムにそった生活・活動、休養・睡眠、口から食事を摂り続けること、フレイル予防のための必要な栄養の確保、清潔を保つこと、排泄を続けられることなどを支援します
家事・コミュニティでの役割の維持あるいは獲得の支援:喜びや楽しみ、強みを引き出し高めること、コミュニケーション、本人にとっての活動と参加を取り巻く交流環境の整備、持っている機能を発揮しやすい環境の整備、家庭内での役割を整えること、コミュニティでの役割を整えることなどを支援します
Ⅲ 家族等への支援
支援を必要とする家族等への対応:家族等の生活を支える支援及び連携の体制整備、将来にわたり生活を継続できるようにすることなどを支援します
家族等の理解者を増やす支援:本人や家族等にかかわる理解者を増やすことなどを支援します
ケアに参画するひとへの支援:本人を取り巻く支援体制の整備、同意してケアに参画するひとへの支援などを支援します
・疾患別ケアマネジメント高齢者が要介護状態になる原因の上位を占める、または罹患すると重篤化しやすい以下の5つの疾患に特有な検討の視点や支援内容を整理しています
脳血管疾患
大腿骨頸部骨折
心疾患
認知症
誤嚥性肺炎
・多職種連携の重要性ケアマネジメントにおいて、多職種連携は情報収集の質を高め、利用者の意向や状態の変化を正確に把握するために不可欠です。研修を通じて、医師からの聞き取りが増加し、サービス事業所からの聞き取りも増えるなど、多職種からの情報収集が促進されたという結果も報告されています
・活用場面この手法は、アセスメントやケアプラン作成時の自己振り返り、OJT(オンザジョブトレーニング)や職場内外での研修、事例検討や地域ケア会議での議論、そして不足している社会資源の整備に向けた検討など、多様な場面で活用されます
 総じて、「適切なケアマネジメント手法」は、高齢者とその家族の生活を多角的に捉え、尊厳ある自立した生活を継続できるよう、包括的かつ科学的な視点から支援するための指針を提供しています
感想として
 今回、研修資料として「適切なケアマネジメント手法」の概要版を使用し研修に臨んでいますが、テキストの文字の小さいことにびっくり!
 「あくまで、辞書のような補助的な資料として活用して欲しい」と、説明はあったものの、内容の細かさに「内容について行けない」と弱音を漏らす受講者の多さが目立ちました。
 実際に、イデアでは令和7年7月より、新入社員も入社してきます。「適切なケアマネジメント手法」を活用することで、知識の差異を埋めることが出来ないか?と考えた結果、「適切なケアマネジメント手法」の概要版をAIに丸投げして回答を引き出す手法を考案し実践中です。
 結果は、どうなったのか?その答えについては、育った新人ケアマネジャーの成長にかかっています。

主任介護支援専門員更新研修に参加して

適切なケアマネジメントの実践とは

 今年度は、介護支援専門員の資格を更新する時期になっている私ですが、現在、主任介護支援専門員更新研修に参加しています。

研修の講義の中で、主題になるのは「適切なケアマネジメント」についてです。

今回、「適切なケアマネジメントの手法」について概要と要点をまとめます。

適切なケアマネジメントとは?

 適切なケアマネジメントとは、介護保険施行から25年が経過しますが、その中で、ケアマネジャーは、アセスメントを通して、利用者の意思や生活背景を尊重し、ケアプランを作成し自立支援を目的とした支援を行ってきました。

 心身の状態や生活環境を多面的に把握し、課題とニーズを明確化。その上で個別性のあるケアプランを作成し、多職種と連携してサービスを調整・実施しますが、新人のケアマネジャーとベテランのケアマネジャーのアセスメントによる分析力ではおのずと差が生まれてしまいます。

 適切なケアマネジメントとは、ケアマネジャーの知見を元に「基本的なケア」と「疾患別ケア」に分けて、情報収集のしかた(あたり)を示した内容になっています。

 言ってみれば、「ベテランの言語化できない(なんとなく)な情報収取の仕方」を、マニュアル化してしまうという取り組みです。

 そのために、学ぶべき科目と要点は膨大な数になります。言ってみれば、25年、現場で積み上げてきた先輩ケアマネジャーの「知見」を言語化した内容とも言えば納得できる内容です。

とても学びのある研修です。この後も引き続き、研鑽を積んで行きたいと思います。引き続き介護支援専門員研修は続きます。

 

『介護支援専門員の勉強会で「事例検討会」へ参加してきました』

 沖縄では、あっという間に梅雨の時期も終わり早くも真夏本番です。最近は、灼熱の太陽と白い雲。そして、どこまでも広がる青空に心癒される日々を送っています。

 季節の移り変わりとは関係なく、イデアでは介護支援専門員として、地域包括支援センター及び各指定居宅介護支援事業所共同開催として「事例検討会」に参加してきました。

 実際の支援事例をもとに、多職種の視点から意見を交わすこの場は、ケアマネジメントの質を高める貴重な機会です。また、特定事業所加算の算定要件としても位置付けられており、制度的な観点からも重要性が増しています。

 今回は、事例検討会の目的と概要を紹介します。

1. はじめに:事例検討会とは?

 

 事例検討会は、介護支援専門員(ケアマネジャー)にとって、実践的な学びの場として非常に重要な位置づけにあります。

 この勉強会の目的は、ケアマネジャーが実際の支援事例を持ち寄り課題や対応策について多角的に検討することです。日々の業務ではなかなか得られない他者の視点や経験を取り入れることで、自らの支援の在り方を見直し、より質の高い支援につなげることができます。

 特に、利用者のニーズが多様化・複雑化する中で、単独の判断だけでは適切な対応が難しい場面も増えています。そうしたケースに対して、事例検討会では多職種の意見や他のケアマネージャーの価値観に触れることができます。他のケアマネージャーさんの価値観にふれることで、判断の幅が広がるとともに、倫理的な課題に対する思考力や判断力も養われます。

 今回の事例とは状況は違いますが・・・たとえば、本人の意思が確認しづらい場合や、家族との意見の食い違いがある場合など、倫理的ジレンマに直面した事例の検討を通じて、他の参加者の考え方やアプローチに学ぶことができます。

 また、事例検討会はケアマネジャーにとっての“勉強会”としての機能も果たしています。日々の業務では習得しづらい新しい制度情報や支援技術、地域資源の活用方法などを共有する場でもあり、知識のアップデートにつながります。

 加えて、医療職や福祉職など他職種との連携を意識した支援の考え方を学ぶ機会にもなり、チームアプローチの実践力が高まるのも大きな利点です。

 このように、事例検討会はケアマネジャーの支援力を総合的に高める場であり、継続的な参加が専門性の向上につながります。

 制度上も「事例検討会への参加」が特定事業所加算の要件に組み込まれていることからも、その意義の高さがうかがえます。単なる形式的な参加にとどまらず、実践的な学びを得る機会として積極的に活用することが求められています。

実際の事例検討会の様子

 実際に参加した事例検討会は、終始真剣な雰囲気の中にも、学びや気づきの多い充実した時間となりました。

 今回の勉強会では、まず1人のケアマネジャーが担当した支援事例を発表し、参加者全員でその内容をもとに検討を行う形式で進行されました。

 発表者は、利用者の生活状況や支援経過、直面した課題、そして自身が取った対応について丁寧に説明されました。

 その後、グループに分かれてディスカッションを行いました。グループには介護福祉士の基礎資格を持ったケアマネジャーだけでなく、基礎資格として看護師の資格を持ったケアマネージャー社会福祉士の資格を持ったケアマネージャーさんも参加されていました。

 また、地域包括支援センターの職員さんなども含まれており、さまざまな立場からの意見が出されました。ある参加者は、医療面の視点から「この時点で訪問看護との連携があればもっと早く対応できたのではないか」と指摘し、また別の参加者は「本人の意思確認の方法について、成年後見制度の利用も選択肢に入れてよかったかもしれない」といった提案をされていました。

 ディスカッションの後は、全体で意見を共有する時間が設けられ、グループごとのまとめや新たな視点、共通する課題などが発表されました。個人的には、「自分の支援が正しいと思っていたことでも、他の視点から見ると改善の余地がある」ということに改めて気づかされ、大変学びの多い時間となりました。

 特に、日常業務では他のケアマネと深く支援内容について意見を交わす機会が少ないため、こうした場で客観的なフィードバックを得られることの貴重さを実感しました。

 また、事例検討を通じて、自分では気づけなかったリスクや支援方法の選択肢が明確になり、今後の業務に即活かせるヒントも多く得られました。

 事例発表をされた方にとっても、意見をもらうことで自身の支援を振り返る機会になっていたようで、勉強会の終わりには「また事例を持ち寄りたい」との声も聞かれました。

 このように、事例検討会は単なる意見交換にとどまらず、実務に直結する学びと振り返りの場であることを実感できました。今後も積極的に参加し、支援の質を高めていきたいと思います。

 

ケアマネージャーのためのBCP(業務継続計画)研修を開催しました

はじめに:BCPとは何か?ケアマネージャーに求められる理由

近年、自然災害や感染症のリスクが高まる中、介護現場でも業務継続計画(BCP)の策定が義務化され、ケアマネージャーに求められる役割が大きく変化しています。特に居宅介護支援事業所では、利用者の安全確保やサービス提供の維持が求められるため、BCPの策定と実践は喫緊の課題です。

本記事では、BCPの基本からケアマネージャーが実践できる具体策、他事業所の成功事例までをわかりやすく解説し、現場で活用できる知識と対応力を養うためのヒントをお届けします。実際にイデアでもBCP業務継続を元に勉強会を先日、開催しました。

その、勉強会の概要を紹介します。

2. BCP策定の基本ステップとポイント

 BCP(業務継続計画)の策定は、非常時においてもサービスを「継続・再開」できる体制を整えるための重要な取り組みです。特に居宅介護支援事業所では、高齢者や要介護者といった災害弱者を支える立場であるため、計画的かつ実効性のあるBCPの策定が求められます。ここでは、ケアマネージャーが押さえておくべきBCP策定の基本ステップと、その際の重要ポイントについて解説します。

 まず最初に行うべきは「リスクアセスメント」です。地震、台風、水害、感染症、停電、通信障害など、地域や事業所の特性に応じて、どのようなリスクが想定されるかを洗い出します。そのうえで、各リスクが業務に与える影響度を評価し、優先的に備えるべきリスクを明確にします。

 次に「重要業務の特定と対応方針の策定」です。すべての業務を平常通り続けることは困難なため、最低限継続すべき業務(例:モニタリング、緊急時対応、介護サービス連携など)を定め、その業務を維持するための方法や代替手段を具体的に検討します。例えば、事業所が被災した場合の代替拠点、職員が出勤困難になった際の応援体制などが該当します。

 三つ目は「体制の構築と役割分担」です。災害時の対応責任者や連絡係、情報収集担当など、職員の役割をあらかじめ明確にし、マニュアルや連絡体制を整備しておくことが重要です。また、非常用備品や連絡先リスト、支援者・関係機関のネットワーク情報もBCPに含めておきましょう。

 最後に「訓練と見直しの実施」があります。BCPは作成しただけでは機能しません。年に1回以上の定期的な訓練(机上訓練・実働訓練)を行い、計画の実効性を検証します。その結果をもとに、課題の洗い出しや改善を行い、常に最新の状態を維持することが求められます。

 BCP策定は一度で完璧に仕上げるものではなく、現場の実態や変化に応じて「運用しながら育てる計画」です。ケアマネージャーは、その中心的役割として、利用者の命と生活を守る仕組みづくりに主体的に関与していくことが期待されています。

3. ケアマネージャーができる具体的な取り組み

 BCP(業務継続計画)の策定と運用において、ケアマネージャーが果たす役割は非常に重要です。災害や感染症などの非常時においても、利用者の安全と生活の質を守るためには、平時からの備えと実践的な取り組みが求められます。ここでは、ケアマネージャーが現場で実践できる具体的なアクションを紹介します。

1. 個別避難計画の作成と更新
要介護者は災害時の自力避難が困難な場合が多く、地域防災計画と連携した「個別避難計画」の整備が急務です。ケアマネージャーは、利用者の身体状況や生活環境、支援者の有無などを考慮し、避難支援計画の立案・記録・共有を行います。定期的な見直しも不可欠です。

2. 家族・関係者との情報共有
非常時に必要な連絡先、服薬情報、医療・介護の重要情報は、あらかじめ家族やサービス担当者会議などで共有しておくことが重要です。情報が即座に取り出せるよう、紙媒体やクラウドツールでの管理も有効です。

3. 地域や他事業所との連携体制の構築
BCPは単独の事業所で完結できるものではありません。地域包括支援センター、訪問介護、医療機関など他の関係機関と日頃から連携を深めておくことで、有事の際に協力体制がスムーズに機能します。地域の防災訓練やネットワーク会議に積極的に参加することも重要です。

4. ICTツールの活用による情報管理
災害時は紙の記録が失われる可能性もあるため、クラウド型のケアマネジメントシステムやグループウェアの導入により、情報のバックアップや遠隔からのアクセスを可能にします。緊急時の連絡網をスマートフォンアプリで管理する事例も増えています。

5. 職員間の役割分担と訓練の実施
ケアマネ自身だけでなく、事業所全体としてBCPを運用するためには、職員それぞれの役割や対応手順を明確にし、定期的な訓練を行うことが大切です。特に「ケアマネ1人体制」の事業所では、代替要員や応援体制の確保がカギとなります。

6. 利用者への啓発と安心づくり
利用者に対しても、BCPに基づく支援体制を丁寧に説明することで、安心感を提供できます。「非常時でも支援が継続される」ことを伝えることが、信頼関係の構築にもつながります。

ケアマネージャーは、介護サービスの中核を担う存在です。日常業務の延長線上で、これらの取り組みを少しずつ取り入れることが、災害時の対応力を大きく向上させます。今できることから始める姿勢が、BCPの成功のカギです。

6. まとめ:BCP策定を通じて目指すべきケアマネージャーの姿

BCP策定は、非常時においても利用者の生活と命を守るための“備え”であり、ケアマネージャーの専門性を活かす絶好の機会です。災害や感染症などの予期せぬ事態に備え、平時からの計画立案や関係機関との連携、訓練の実施を通じて、利用者に「安心」と「信頼」を提供することができます。単なる書類作成に留まらず、現場に根ざした実践力と判断力を備えたケアマネージャーこそ、地域包括ケアの要としてこれからの時代に求められる存在です。今年度、初回のBCP業務継続計画を元に研修を行いました。

今後も、地域に資するような地域ケアマネジメントを構築してきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。