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月別アーカイブ: 2025年6月

主任介護支援専門員更新研修に参加して

適切なケアマネジメントの実践とは

 今年度は、介護支援専門員の資格を更新する時期になっている私ですが、現在、主任介護支援専門員更新研修に参加しています。

研修の講義の中で、主題になるのは「適切なケアマネジメント」についてです。

今回、「適切なケアマネジメントの手法」について概要と要点をまとめます。

適切なケアマネジメントとは?

 適切なケアマネジメントとは、介護保険施行から25年が経過しますが、その中で、ケアマネジャーは、アセスメントを通して、利用者の意思や生活背景を尊重し、ケアプランを作成し自立支援を目的とした支援を行ってきました。

 心身の状態や生活環境を多面的に把握し、課題とニーズを明確化。その上で個別性のあるケアプランを作成し、多職種と連携してサービスを調整・実施しますが、新人のケアマネジャーとベテランのケアマネジャーのアセスメントによる分析力ではおのずと差が生まれてしまいます。

 適切なケアマネジメントとは、ケアマネジャーの知見を元に「基本的なケア」と「疾患別ケア」に分けて、情報収集のしかた(あたり)を示した内容になっています。

 言ってみれば、「ベテランの言語化できない(なんとなく)な情報収取の仕方」を、マニュアル化してしまうという取り組みです。

 そのために、学ぶべき科目と要点は膨大な数になります。言ってみれば、25年、現場で積み上げてきた先輩ケアマネジャーの「知見」を言語化した内容とも言えば納得できる内容です。

とても学びのある研修です。この後も引き続き、研鑽を積んで行きたいと思います。引き続き介護支援専門員研修は続きます。

 

【本の紹介】40代後半から50代にかけて襲う「しんどさの正体」について

「しんどさの正体」ミッドライフクライシスとは?

 人生の折り返し地点を過ぎたとき、多くの人が理由のわからない「しんどさ」や「不安」に襲われる。そんな感情の変化を感じたことはありませんか?この不安の感情の乱れを「ミッドライフ・クライシス」と呼びます。

 鎌田實氏の著書『ミッドライフ・クライシス~80%の人が襲われる”しんどい”の正体~』は、医師としての豊富な経験と、自身の人生を通して得た知見をもとに、この現象の正体を明らかにし、乗り越えるためのヒントを与えてくれる一冊です。

 鎌田實氏の著書『ミッドライフ・クライシス~80%の人が襲われる”しんどい”の正体~』の概要について

 本書はまず、「ミッドライフ・クライシス」が単なる気の持ちようではなく、誰にでも起こりうる人生の転機であることを教えてくれます。

 特に40代後半から60代にかけての時期は、体力の衰え、仕事上の転換家庭での役割の変化、親の介護子の独立といった、多くのストレス要因が重なりやすい。鎌田氏は、こうした変化が心に与える影響を見逃さず、具体的な事例を通じて読者に寄り添います。

 今回、『ミッドライフ・クライシス~80%の人が襲われる”しんどい”の正体~』を紹介する理由として、介護をされるご家族に知っていて欲しい1冊として取り上げました。

 印象的なのは、「しんどさ」から逃げるのではなく、それを通して「自分にとって本当に大切なもの」に気づいていく姿勢です。

ミッドライフ・クライシスとは「第二の思春期」

 鎌田氏は、ミッドライフ・クライシスを「第二の思春期」とも表現し、これはむしろ自分の生き方を再定義する好機だといいます。そのためには、まず自分の感情に正直になり、無理に強がらず、時には「助けを求める」ことの大切さを説いています。

 また、本書では「孤独」「つながり」の問題も深く掘り下げられていることも特徴の一つです。現代人は情報過多でありながら、心のつながりが希薄になりがちです。

ミッドライフ・クライシスの正体とは「社会的な孤立」だった?

 中年期に感じる喪失感や虚無感は、実は「社会的な孤立」から来ていることもあると説明します。

 この世代の方には、ご自身の親のお世話を経験されているかたも多いと思います。時に閉鎖的な空間と時間の中で精神的な負担は計り知れないと思います。

 「ミッドライフ・クライシス」という言葉を知っているだけで、症状が当てはまるなら、一度、立ち止まって自分を省みても良いと思います。

 鎌田氏は、地域社会とのつながり、ボランティア活動、趣味や仲間との交流などを通じて、「再び人とつながること」がこの時期を乗り越える鍵だと説きます。

 さらに、医師ならではの視点で「体と心の関係」にも触れているところも注目です。加齢による体力やホルモンの変化は、精神面にも影響を与えます。

 そのため、運動や食生活の改善、適度な休息も、メンタルの安定には不可欠だと述べる。身体の変化を「衰え」として否定的にとらえるのではなく、「これまでよく頑張ってきた証」として肯定的に受け入れる姿勢が大切だと強調しています。

具体的なアドバイスを示してくれる本

 本書は、ただ「こうすればいい」と安易に処方箋を提示するのではなく、読者一人ひとりが「自分のしんどさ」と真剣に向き合い、それを通して自分の人生の意味を見出す手助けをしてくれます。鎌田氏の言葉は、どこまでも優しく、時に厳しく、読む者の胸に響きます。

 ミッドライフ・クライシスを避けられない苦しみではなく、「新しい人生の扉を開くための入口」としてとらえ直す。この視点を持つだけでも、私たちの心は大きく軽くなるはずです。人生の中間点を生きるすべての人に、本書を静かに、しかし力強く薦めたい1冊です。

 今後、介護世代のかたに対して、おすすめの本なども紹介できればと思います。引き続きよろしくお願いいたします。

【さらに詳しく内容を知りたい方に】

https://yabiccho-san.com/wp-admin/post.php?post=1526&action=edit

『介護支援専門員の勉強会で「事例検討会」へ参加してきました』

 沖縄では、あっという間に梅雨の時期も終わり早くも真夏本番です。最近は、灼熱の太陽と白い雲。そして、どこまでも広がる青空に心癒される日々を送っています。

 季節の移り変わりとは関係なく、イデアでは介護支援専門員として、地域包括支援センター及び各指定居宅介護支援事業所共同開催として「事例検討会」に参加してきました。

 実際の支援事例をもとに、多職種の視点から意見を交わすこの場は、ケアマネジメントの質を高める貴重な機会です。また、特定事業所加算の算定要件としても位置付けられており、制度的な観点からも重要性が増しています。

 今回は、事例検討会の目的と概要を紹介します。

1. はじめに:事例検討会とは?

 

 事例検討会は、介護支援専門員(ケアマネジャー)にとって、実践的な学びの場として非常に重要な位置づけにあります。

 この勉強会の目的は、ケアマネジャーが実際の支援事例を持ち寄り課題や対応策について多角的に検討することです。日々の業務ではなかなか得られない他者の視点や経験を取り入れることで、自らの支援の在り方を見直し、より質の高い支援につなげることができます。

 特に、利用者のニーズが多様化・複雑化する中で、単独の判断だけでは適切な対応が難しい場面も増えています。そうしたケースに対して、事例検討会では多職種の意見や他のケアマネージャーの価値観に触れることができます。他のケアマネージャーさんの価値観にふれることで、判断の幅が広がるとともに、倫理的な課題に対する思考力や判断力も養われます。

 今回の事例とは状況は違いますが・・・たとえば、本人の意思が確認しづらい場合や、家族との意見の食い違いがある場合など、倫理的ジレンマに直面した事例の検討を通じて、他の参加者の考え方やアプローチに学ぶことができます。

 また、事例検討会はケアマネジャーにとっての“勉強会”としての機能も果たしています。日々の業務では習得しづらい新しい制度情報や支援技術、地域資源の活用方法などを共有する場でもあり、知識のアップデートにつながります。

 加えて、医療職や福祉職など他職種との連携を意識した支援の考え方を学ぶ機会にもなり、チームアプローチの実践力が高まるのも大きな利点です。

 このように、事例検討会はケアマネジャーの支援力を総合的に高める場であり、継続的な参加が専門性の向上につながります。

 制度上も「事例検討会への参加」が特定事業所加算の要件に組み込まれていることからも、その意義の高さがうかがえます。単なる形式的な参加にとどまらず、実践的な学びを得る機会として積極的に活用することが求められています。

実際の事例検討会の様子

 実際に参加した事例検討会は、終始真剣な雰囲気の中にも、学びや気づきの多い充実した時間となりました。

 今回の勉強会では、まず1人のケアマネジャーが担当した支援事例を発表し、参加者全員でその内容をもとに検討を行う形式で進行されました。

 発表者は、利用者の生活状況や支援経過、直面した課題、そして自身が取った対応について丁寧に説明されました。

 その後、グループに分かれてディスカッションを行いました。グループには介護福祉士の基礎資格を持ったケアマネジャーだけでなく、基礎資格として看護師の資格を持ったケアマネージャー社会福祉士の資格を持ったケアマネージャーさんも参加されていました。

 また、地域包括支援センターの職員さんなども含まれており、さまざまな立場からの意見が出されました。ある参加者は、医療面の視点から「この時点で訪問看護との連携があればもっと早く対応できたのではないか」と指摘し、また別の参加者は「本人の意思確認の方法について、成年後見制度の利用も選択肢に入れてよかったかもしれない」といった提案をされていました。

 ディスカッションの後は、全体で意見を共有する時間が設けられ、グループごとのまとめや新たな視点、共通する課題などが発表されました。個人的には、「自分の支援が正しいと思っていたことでも、他の視点から見ると改善の余地がある」ということに改めて気づかされ、大変学びの多い時間となりました。

 特に、日常業務では他のケアマネと深く支援内容について意見を交わす機会が少ないため、こうした場で客観的なフィードバックを得られることの貴重さを実感しました。

 また、事例検討を通じて、自分では気づけなかったリスクや支援方法の選択肢が明確になり、今後の業務に即活かせるヒントも多く得られました。

 事例発表をされた方にとっても、意見をもらうことで自身の支援を振り返る機会になっていたようで、勉強会の終わりには「また事例を持ち寄りたい」との声も聞かれました。

 このように、事例検討会は単なる意見交換にとどまらず、実務に直結する学びと振り返りの場であることを実感できました。今後も積極的に参加し、支援の質を高めていきたいと思います。

 

ケアマネージャーのためのBCP(業務継続計画)研修を開催しました

はじめに:BCPとは何か?ケアマネージャーに求められる理由

近年、自然災害や感染症のリスクが高まる中、介護現場でも業務継続計画(BCP)の策定が義務化され、ケアマネージャーに求められる役割が大きく変化しています。特に居宅介護支援事業所では、利用者の安全確保やサービス提供の維持が求められるため、BCPの策定と実践は喫緊の課題です。

本記事では、BCPの基本からケアマネージャーが実践できる具体策、他事業所の成功事例までをわかりやすく解説し、現場で活用できる知識と対応力を養うためのヒントをお届けします。実際にイデアでもBCP業務継続を元に勉強会を先日、開催しました。

その、勉強会の概要を紹介します。

2. BCP策定の基本ステップとポイント

 BCP(業務継続計画)の策定は、非常時においてもサービスを「継続・再開」できる体制を整えるための重要な取り組みです。特に居宅介護支援事業所では、高齢者や要介護者といった災害弱者を支える立場であるため、計画的かつ実効性のあるBCPの策定が求められます。ここでは、ケアマネージャーが押さえておくべきBCP策定の基本ステップと、その際の重要ポイントについて解説します。

 まず最初に行うべきは「リスクアセスメント」です。地震、台風、水害、感染症、停電、通信障害など、地域や事業所の特性に応じて、どのようなリスクが想定されるかを洗い出します。そのうえで、各リスクが業務に与える影響度を評価し、優先的に備えるべきリスクを明確にします。

 次に「重要業務の特定と対応方針の策定」です。すべての業務を平常通り続けることは困難なため、最低限継続すべき業務(例:モニタリング、緊急時対応、介護サービス連携など)を定め、その業務を維持するための方法や代替手段を具体的に検討します。例えば、事業所が被災した場合の代替拠点、職員が出勤困難になった際の応援体制などが該当します。

 三つ目は「体制の構築と役割分担」です。災害時の対応責任者や連絡係、情報収集担当など、職員の役割をあらかじめ明確にし、マニュアルや連絡体制を整備しておくことが重要です。また、非常用備品や連絡先リスト、支援者・関係機関のネットワーク情報もBCPに含めておきましょう。

 最後に「訓練と見直しの実施」があります。BCPは作成しただけでは機能しません。年に1回以上の定期的な訓練(机上訓練・実働訓練)を行い、計画の実効性を検証します。その結果をもとに、課題の洗い出しや改善を行い、常に最新の状態を維持することが求められます。

 BCP策定は一度で完璧に仕上げるものではなく、現場の実態や変化に応じて「運用しながら育てる計画」です。ケアマネージャーは、その中心的役割として、利用者の命と生活を守る仕組みづくりに主体的に関与していくことが期待されています。

3. ケアマネージャーができる具体的な取り組み

 BCP(業務継続計画)の策定と運用において、ケアマネージャーが果たす役割は非常に重要です。災害や感染症などの非常時においても、利用者の安全と生活の質を守るためには、平時からの備えと実践的な取り組みが求められます。ここでは、ケアマネージャーが現場で実践できる具体的なアクションを紹介します。

1. 個別避難計画の作成と更新
要介護者は災害時の自力避難が困難な場合が多く、地域防災計画と連携した「個別避難計画」の整備が急務です。ケアマネージャーは、利用者の身体状況や生活環境、支援者の有無などを考慮し、避難支援計画の立案・記録・共有を行います。定期的な見直しも不可欠です。

2. 家族・関係者との情報共有
非常時に必要な連絡先、服薬情報、医療・介護の重要情報は、あらかじめ家族やサービス担当者会議などで共有しておくことが重要です。情報が即座に取り出せるよう、紙媒体やクラウドツールでの管理も有効です。

3. 地域や他事業所との連携体制の構築
BCPは単独の事業所で完結できるものではありません。地域包括支援センター、訪問介護、医療機関など他の関係機関と日頃から連携を深めておくことで、有事の際に協力体制がスムーズに機能します。地域の防災訓練やネットワーク会議に積極的に参加することも重要です。

4. ICTツールの活用による情報管理
災害時は紙の記録が失われる可能性もあるため、クラウド型のケアマネジメントシステムやグループウェアの導入により、情報のバックアップや遠隔からのアクセスを可能にします。緊急時の連絡網をスマートフォンアプリで管理する事例も増えています。

5. 職員間の役割分担と訓練の実施
ケアマネ自身だけでなく、事業所全体としてBCPを運用するためには、職員それぞれの役割や対応手順を明確にし、定期的な訓練を行うことが大切です。特に「ケアマネ1人体制」の事業所では、代替要員や応援体制の確保がカギとなります。

6. 利用者への啓発と安心づくり
利用者に対しても、BCPに基づく支援体制を丁寧に説明することで、安心感を提供できます。「非常時でも支援が継続される」ことを伝えることが、信頼関係の構築にもつながります。

ケアマネージャーは、介護サービスの中核を担う存在です。日常業務の延長線上で、これらの取り組みを少しずつ取り入れることが、災害時の対応力を大きく向上させます。今できることから始める姿勢が、BCPの成功のカギです。

6. まとめ:BCP策定を通じて目指すべきケアマネージャーの姿

BCP策定は、非常時においても利用者の生活と命を守るための“備え”であり、ケアマネージャーの専門性を活かす絶好の機会です。災害や感染症などの予期せぬ事態に備え、平時からの計画立案や関係機関との連携、訓練の実施を通じて、利用者に「安心」と「信頼」を提供することができます。単なる書類作成に留まらず、現場に根ざした実践力と判断力を備えたケアマネージャーこそ、地域包括ケアの要としてこれからの時代に求められる存在です。今年度、初回のBCP業務継続計画を元に研修を行いました。

今後も、地域に資するような地域ケアマネジメントを構築してきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。